杜氏が語る「花巴」

杜氏が語る「花巴」

Sake that conveys the taste of rice

奈良吉野の風土を理解した
伝統製法による米の旨味が伝わる酒造り 

「美吉野醸造株式会社」は、紀伊半島の中心・吉野川を臨む六田(むだ)に1912年に蔵を構えました。千本桜で知られる奈良吉野で豊かな自然の恩恵を受け、手造りだからこそできる「米の旨味が伝わる酒」を醸しております。

酸を解放する酒造り

美吉野醸では、創業より上質な酸の出る蔵でした。奈良・吉野がある紀伊半島は山深いその立地ゆえに昔から保存文化が根付いている地域です。

漬物や味噌・醤油のように塩漬けを行わないと腐ってしまうぐらい、自然と発酵が進む多湿な山林地帯です。その吉野の発酵・保存食文化と共にある酒造りとは何かを考えてゆくこと、発酵による酸を抑制する酒造りではなく、酸を解放する酒造りにたどり着きました。

あたり前の酒造り

これまでの酒造りでは、原料米の等級や品種、精米歩合を決め、酵母菌を選び、温度制御の出来る仕込タンクを用いることで、「味の再現性」を目指して設備を使いこなす技術を磨いてきました。
米の品種、精米歩合、酵母、温度を決め込むことで安定させる酒造りが“当たり前”でした。良い酒を造るには「この米でないといけない」「この酵母でないといけない」「この発酵温度でないといけない」など、地元の米ではなく、風土にあった酵母でもない酒造りの中に美味しさを追い求めてきたように思います。

そんな中、吉野に住み、吉野の風土を解釈し理解するにしたがって、吉野に根付いた酒造りということを考えるようになりました。それには、今まで当たり前のように考えていた「でないといけない」という過去の当たり前からの脱却が必要でした。

他の地域での“あたりまえ”は、吉野という地域での農業や風土にとっては必ずしも“あたりまえ”ではありません。
吉野という地域での“あたりまえ”を見つけるため試行錯誤を繰り返しながら、酒造りを年々重ねてゆくほどに、自然にゆっくりと吉野の美吉野醸造ならではの“あたりまえ”の酒造りになってきたように感じています。

風土に育まれた米や水を、風土が残した菌で活かす。普通の数倍の時間と手間がかかっても吉野に寄り添った酒を造ること。これが美吉野醸造の強い思いです。

代表銘柄「花巴」

千本桜で全国的にも名が知られる吉野山。その吉野の桜はほとんどが山桜です。

修験道の開祖 役行者が日本独自の仏である金剛蔵王権現を祈りだした時、その姿をヤマザクラの木に刻みお祀りしたことから、以来、蔵王権現や役行者に対する信仰の証として信者たちによって献木として1本1本と植え続けられたことで、その美しき桜の風景がつくりあげられてきました。

当蔵元で醸している「花巴」の
「花」は、そのヤマザクラを、
「巴」は、そのひろがりを意味しております。
登録商標

「花巴」は、明治時代まで、吉野山にある蔵元で醸されていました。しかしながら、火事で蔵が焼失し、銘柄が途絶える危機となりました。そこで、先代の橋本をはじめとする吉野六田の地で4軒合名会社を設立し1912年、現在の吉野川のほとりに拠点をつくり、花巴の銘柄を引き継ぎました。
 
代々大切に受け継がれてきた、花巴(はなともえ)という清酒銘柄に誇りをもち、吉野山の桜のように1本1本を大切に蔵元の思いを込めてお客様へお届けしたいと考えております。