吉野の風土と酒造り

吉野の風土と酒造り

Close to the climate of Yoshino

吉野の風土に寄り添い、伝わる酒

美吉野醸造は、地元吉野の自然風土に寄り添い、米や発酵の質や文化が伝わる酒造りをしたいと、常に考えています。
美吉野醸造が考える酒造りとは、単にお酒を造って販売するだけでなく、お客様に吉野の風土を感じて頂くことや風土が生み出すお酒の力を知って頂くことです。
飲むだけでお客様の腑に落ちるようなお酒ができるよう、日々精進しています。

吉野の風土とは

風土という漠然とした表現ですが、酒造りにおいて風土は最も向き合う必要があるものです。
紀伊半島は山深い地域が多い為、保存食文化とそれを備蓄するという生活風土が根付いています。中でも吉野地域は、山深く雨の多いじめじめした土地柄なので、乾燥や燻製ではなく、塩漬けという保存の文化が生まれました。漬物やみそ・しょうゆといった塩漬けと発酵を利用した醸造文化は、紀伊半島で生まれたと云われています。

ここ吉野で育まれた塩漬け・発酵食として有名なものに、柿の葉寿司があります。山間部では貴重な海の幸である熊野(和歌山県)の鯖を腐らないように塩漬けにして吉野まで山を越えて運び、酢飯と共に殺菌効果がある柿の葉(柿の名産地なので身近にある)にくるんで押し寿司にすることで保存性を高め、夏祭りの期間に食べるご馳走として根付いた郷土料理です。
吉野では、日常食の漬物に始まり、ご馳走であった柿の葉寿司まで、先人たちの生活の知恵の中から生まれる保存食が食卓を彩ってきました。

吉野の風土を活かした酒造り

吉野の風土が生み出したものは保存食だけではありません。吉野が山林がうっそうと育ち高温多湿な地域であるがゆえに、お酒造りには欠かせない麹菌にも、独特の変化をもたらしました。

吉野の風土の中で、カビの一種である麹も多湿の恩恵を受け、繁殖が進みやすく、しっかりとした強い麹となります。
麹の力が強いと、米がよく溶けます。その結果、米の旨みが良く引き出されます。
しかし、米がよく溶け、強い麹による醗酵が進むと、酸が生み出されます。
これは、当然のことで、「酸が生み出される」ということは、「強い麹を使用した」という証なのです。

酸を嫌い、このことを隠すという酒造りもあるかもしれません。
ですが、美吉野醸造では、あえて酒質の主軸に酸を据え、発酵による酸を抑制する酒造りではなく、酸を解放する酒造りにたどり着きました。
酸と旨味を同調させ、伝統製法の持つ乳酸のニュアンスをかりることで、お酒に多種多様な表情を出し、酸が悪者ではないという事を表現しています。
そして、この方法こそが、吉野でしか生まれえない風土に寄り添う酒造りだと考えています。